肺がん末期とは、一般的に遠隔転移を伴うステージ4の状態や、根治的な治療が難しくなった段階を指して使われる言葉です。
医学的に「末期」という明確な定義があるわけではありませんが、がんが肺の外へ広がり、治療の目的が完全な治癒から病状のコントロールや生活の質(QOL)の維持へ移行する段階を指す場合に使われます。
肺がんは日本で死亡数の多いがんの一つであり、進行すると
・息苦しさ(呼吸困難)
・咳や血痰
・胸水による呼吸の苦しさ
・骨転移による強い痛み
・脳転移による神経症状
などの症状が現れることがあります。
一方で近年は、
・免疫チェックポイント阻害薬
・分子標的薬
などの治療が進歩しており、ステージⅣでも病状を一定期間コントロールできる症例が報告されています。
本ページでは、肺がん末期の症状、生存率、余命、治療、緩和ケア、生活の過ごし方などについて、公表データをもとに整理します。
なお、本ページで紹介する生存率や余命は統計データに基づく参考情報であり、個々の患者の経過を示すものではありません。
肺がん末期とは(ステージ4との関係)
肺がんでは、がんの広がりを示す指標としてステージ分類が用いられます。
ステージは主に次の要素によって決まります。
・腫瘍の大きさ
・リンパ節転移
・周囲臓器への浸潤
・遠隔転移
一般に「肺がん末期」は遠隔転移を伴うステージⅣを指して使われることが多くなります。
肺がんで多い転移部位は次の通りです。
・脳
・骨
・肝臓
・副腎
特に肺がんは脳転移が比較的多いことが知られており、頭痛や神経症状の原因になることがあります。
近年は遺伝子変異に合わせた分子標的薬や免疫療法の進歩により、ステージⅣでも長期間病状をコントロールできるケースが増えていると報告されています。
肺がん末期の症状
肺がん末期では、腫瘍の進行や転移によってさまざまな症状が現れることがあります。
息苦しさ(呼吸困難)
肺がんでは、次のような理由で呼吸困難が生じることがあります。
・腫瘍による気道の狭窄
・胸水の貯留
・肺機能の低下
・肺炎
呼吸困難が強い場合には、
・酸素療法
・胸水の排液
・薬物治療
・緩和ケア
などによって症状を和らげることがあります。
胸水(胸に水がたまる)
肺がんでは胸腔内に液体がたまる「癌性胸水」が起こることがあります。
主な症状
・息切れ
・胸の圧迫感
・呼吸困難
胸水が多い場合には、
・胸水穿刺
・胸腔ドレナージ
・胸膜癒着療法
などの治療が行われることがあります。
咳・血痰
肺がんでは気道に腫瘍ができることで、
・咳
・血痰
・喀血
などがみられることがあります。
出血が多い場合には
・放射線治療
・内視鏡治療
などが検討されることがあります。
脳転移
肺がんは脳転移が起こりやすいがんです。
主な症状
・頭痛
・吐き気
・けいれん
・手足の麻痺
・意識障害
脳転移が見つかった場合には、
・放射線治療
・手術
・薬物療法
などが検討されることがあります。
骨転移による痛み
肺がんでは骨転移が起こることがあります。
主な症状
・骨の痛み
・骨折
・神経圧迫
骨転移に対しては、
・放射線治療
・骨修飾薬(ゾレドロン酸など)
・痛みのコントロール
などが行われます。
上大静脈症候群(顔や首の腫れ)
肺がんでは腫瘍が上大静脈を圧迫することで
・顔や首の腫れ
・呼吸困難
・頭痛
などが起こることがあります。
この状態は緊急対応が必要になる場合もあるため、早めの医療相談が重要です。
肺がん末期の生存率
下記は、院内がん登録の公表データをもとに整理した肺がんのステージ別生存率です。
生存率データには、ネット・サバイバル(純生存率)の数値を記載しています。
| stage | 5年生存率 (2015年診断) | 10年生存率 (2012年診断) |
| Ⅰ | 81.9% | 63.9% |
| Ⅱ | 51.7% | 30.9% |
| Ⅲ | 29.3% | 14.8% |
| Ⅳ | 8.6% | 2.5% |
| 全平均 | 45.1% | 30.3% |
出典:国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」
※がん種および診断年を選択して表示される全国集計データをもとに整理しています。
※生存率は院内がん登録の集計に基づく参考値であり、個々の予後を示すものではありません。
●生存率データの読み方
肺がんは早期に発見された場合、生存率が比較的高いがんです。
例えば、
・ステージⅠ:5年生存率 約82%
・ステージⅡ:5年生存率 約52%
とされています。
一方、遠隔転移を伴うステージⅣでは5年生存率は約8.6%とされており、他のステージと比較して低くなります。
ただし、この数値は全国の患者データを平均した統計値であり、実際の経過は次の要因によって大きく異なります。
・遺伝子変異(EGFR、ALKなど)
・免疫療法の効果
・転移の部位
・体力や栄養状態
近年は分子標的薬や免疫療法の進歩により、ステージⅣでも長期間生活できる症例が報告されています。
肺がん末期の余命
肺がん末期の余命については、多くの方が関心を持つテーマですが、医学的に正確な余命を予測することは困難とされています。
余命に影響する主な要因
・遺伝子変異の有無
・抗がん剤や免疫療法の効果
・転移の部位
・全身状態
・栄養状態
薬物療法によって腫瘍の進行が抑えられる場合、数年以上生活できるケースもあります。
一方で病状が進行すると、治療の目的は症状緩和や生活の質の維持へと移行します。
肺がん末期の治療
肺がん末期では、全身に作用する薬物療法が治療の中心になります。
肺がんは近年治療の進歩が大きく、遺伝子変異に応じた分子標的薬や免疫療法によって病状を長期間コントロールできるケースも報告されています。
主な治療は次の通りです。
抗がん剤治療
抗がん剤は、肺がんの進行を抑えるために使用される基本的な薬物療法です。
代表的な薬剤
・シスプラチン
・カルボプラチン
・ペメトレキセド
・パクリタキセル
これらの薬剤は単独または併用で使用され、腫瘍の増殖を抑える効果が期待されます。
分子標的薬(遺伝子変異に合わせた治療)
肺がんでは、がん細胞の遺伝子変異を調べることで、特定の分子を標的とした薬が使用できる場合があります。
主な遺伝子変異
・EGFR
・ALK
・ROS1
・BRAF
・MET
・RET
これらの遺伝子変異がある場合、対応する分子標的薬が使用されることがあります。
分子標的薬は、従来の抗がん剤よりも効果が高く、長期間病状をコントロールできる症例も報告されています。
免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)
肺がんでは免疫療法も重要な治療の一つです。
免疫療法は、体の免疫ががん細胞を攻撃する力を高める治療です。
代表的な薬
・ニボルマブ
・ペムブロリズマブ
・アテゾリズマブ
免疫療法では、数年以上病状が安定する症例が報告されており、肺がん治療の大きな進歩とされています。
標準治療後の選択肢
標準治療の効果が弱くなった場合でも、
・新しい分子標的薬
・免疫療法
・臨床試験(治験)
などの選択肢が検討されることがあります。
治療方針については、主治医と相談しながら判断することが重要です。
緩和ケア(症状を和らげる医療)
肺がん末期では緩和ケアが重要になります。
主な内容
・呼吸困難の緩和
・痛みのコントロール
・精神的サポート
・在宅療養支援
緩和ケアは、がん治療と並行して行われる医療です。
症状を適切にコントロールすることで、生活の質を大きく改善できる場合があります。
最期の経過(呼吸はどうなるのか)
肺がん末期では、病状の進行とともに
・呼吸困難
・倦怠感
・食欲低下
・体力低下
などがみられることがあります。
進行すると
・活動量の低下
・眠る時間の増加
などの変化がみられることがあります。
ただし経過には個人差があり、症状は緩和ケアによってコントロールされる場合があります。
よくある質問
| 🅠肺がん末期でも長く生きることはありますか? 🅐分子標的薬や免疫療法の進歩により、ステージⅣでも長期間病状をコントロールできる症例があります。 |
| 🅠息苦しさは強くなりますか? 🅐肺がんでは呼吸困難が生じることがありますが、酸素療法や緩和ケアによって症状を和らげることが可能です。 |
| 🅠セカンドオピニオンは受けられますか? 🅐多くのがん診療連携拠点病院でセカンドオピニオン外来が設けられています。 |
まとめ(肺がん末期の理解)
肺がん末期とは、一般的に遠隔転移を伴うステージⅣの状態を指して使われることが多い言葉です。
重要なポイント
・肺がん末期は主にステージⅣ
・息苦しさや胸水など呼吸症状が起こることがある
・脳転移や骨転移が比較的多い
・ステージⅣの5年生存率は約8〜9%
・分子標的薬や免疫療法が重要
・緩和ケアが生活の質の維持に重要
生存率や余命は統計データに基づく参考値であり、実際の経過には大きな個人差があります。
具体的な治療や見通しについては、主治医と相談しながら判断することが重要です。
<参考文献・出典>
・国立がん研究センター がん情報サービス
・国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果
・日本肺癌学会 ガイドライン
・各医療機関公開資料
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